事業において、(特に中小企業において)
商品・サービスを安売りしないこと、高く売ることは必要不可欠である。
しかし、残念ながら、こんな風な声が聞こえてくる。
お問い合わせをいただいたお客様から
「あとほんの気持ち安くしていただいたら嬉しいんだけど」と言われ、買ってほしいから値引きした。
通販サイトで、販売している商品がなかなか売れない。
社内からは「やっぱり価格が高すぎるんじゃないの? 価格を安くしてまず買ってもらって、良さをわかってもらえば高い商品を買ってくれるんじゃない?」と言われ、価格を下げて販売しようと思う。
自慢の新商品を開発して営業に行くと、取引先から
「それ良いね、単価〇〇○円ぐらいにならないかな?」
「このパッケージをもっと□□風にしてもらえるとうちでも扱えるかな?」と言われ、
買ってもらうためにはと、価格を下げ、パッケージの変更の手配を掛けた。
「当たり前じゃん、よくあることだ」と思われただろうか?
でも、私はそんな話を聞くたたびに「ちょっと待ってください」と思ってしまう。
私は商品・サービスは決して安売りしてはならないと思っている。
中小企業は特に。
なぜか?・・・その理由は、この記事を最後まで読んでいただくとわかると思う。
では、中小企業が値引きすることに隠された問題とは何だろうか?
まず第1の問題は「価格を安くする=買ってもらえる(=会社のためになる)」という幻想である。
100歩譲って価格を安くして買ってもらえたとしよう。
そのお客様は、自社が思っている『商品・サービスの良さ』をわかって
買っていただいたのだろうか?
買ってご利用いただいたら、商品・サービスの良さをわかってくれて、
次は高額な商品を買っていただけるのだろうか?
安いから買う人は、『安売り以外のときは買わない』のではないだろうか?
それに、一度安売りした価格は次は安売りにならない。
次はもっと安くしなければお客様は買ってくれないだろう。
これがずっと続くとどうなるだろうか?
それでも、価格を安くすることが会社のためになると言えるのだろうか?
第2の問題は、『価格=商品・サービスの原価+利益』だと思ってしまっていること。
商品・サービスの価格はどのように設定しているだろうか?
「原価がこれだけだから、適正価格はこれぐらいだろう」
「他社と比べても安いので売れるだろう」
このように、原価をベースに積み上げ式で価格を決めていないだろうか?
「原価がこれだけ掛かっていますから、価格がこれだけになります。」という理屈は、お客様には関係がないこと。
では、お客様がお金を払って自社の商品・サービスを購入するのはどんなときだろうか?
お金を払う喜びを感じるときではないだろうか?
お客様にとって「自分が喜びを感じれること」を
払うお金より少しでも上回っていれば
「買いたい」と思ってお金を払ってくれるのではないだろうか?
それがお客様の価値だと思う。
だから「もうちょっと安くなんないかな?」と言われるということは
お客様の中で『商品・サービスの価値<商品・サービスの価格』ということなんだと思う。
第3の問題は、お客様と自社の問題を混同していることだ。
- 自社の商品・サービスをこの価格で販売するというのは、自社が決めること。
- 「それを買うかどうか?」はお客様が決めること。
「この商品を安い価格で買いたい」は自社の問題ではなく、お客様の問題である。
お客様に「価格を安くして」と言われて、価格を安くするというのは、
お客様の問題を抱えていることにはならないだろうか?
ましてや、「この商品のパッケージをこうしたい」というのは誰の問題だろうか?
それを安直に変えようとするのは・・・
本末転倒なことだということがわかっていただけると思う。
価格というのは案外、ビジネスモデルの根幹に関わることだと思う。
ちょっと問題ばかり書いてきたが、問題を指摘したいのではなく、
自社のビジネスの立ち位置と、商品・サービスの価値を考えていただきたいからである。
- 自分たちが喜んでもらいたいのはどんな人なのか?
- そのお客様に、商品・サービスを通してどんな喜びを体験してもらいたいのか?
- そのために必要なこと、自社が提供することは何なのか?
- 自社が商品・サービスを通して提供する喜びは、お客様にとってどれぐらいの価値があるのか?
それを表現したのが価格ではないだろうか?
これは、私の友人が言ってた言葉だが、
『商品・サービスの価格の〇〇〇円』は『お客様からの〇〇〇ありがとう』と一緒。
商品の価値は、お客様にどれだけありがとうと言っていただけたかだ。
私も本当にそう思う。
自社の商品・サービスの価格を下げたくなったときは、
『自社が提供しているお客様の喜びと、それに対してのありがとう』を考えてみてはいかがだろうか?