あるクライアントから新商品のパッケージデザインについて相談があった。
デザインを制作したのは、業界では一応名の通ったパッケージデザイン会社。
早速デザインを拝見すると、
確かにプロのデザイナーっぽくキレイには仕上がっているんだけど、
「どこにでもありそうなデザインで、なんか普通」という感想。
クライアント会社の社員からも同じような感想を言われたらしい。
「なんか違うな~?何が違うんだろうか?」と思っていると、
クライアント自身もそう思っていたらしく、
「一度変更を依頼して上がってきたのがコレなんです」と
別バージョンのデザインを見せられた。
そのデザインを見て、開いた口がふさがらなくなった。
そのデザイナー曰く
「文字部分を目立つように金色に光る箔押しバージョンです!」
ということらしい。
「オイオイお~い、それはないやん~」と思いながら、
「そのデザイナーさんには、今回のデザイン、ちょっと無理なんですかね~?」
とクライアントに尋ねると
「でも、本人は自分でイケてるデザイナーと思っているらしくて、
いつも自信満々で見せてくるんです。上から目線ですし。」
それを聞いて「とほほ~、ダメだこりゃ」と。
そこで、何がダメなのか整理してみた。
まずこのデザイナーのクオリティ&スキルはちょっと横に置いといたとして、
このデザイナーは、
『素晴らしいデザインを提供すれば顧客が喜ぶ』
と思っているんだと思う。
そして自分のデザインをイケてると思っている。
(それは横に置いといて)
これは、
自分のデザインに顧客を合わせるアーティスト型と
私は勝手に呼んでいる。
(ちょっとくどいがクオリティ&スキルのレベルは別問題である。)
私もデザイナーとして業界にいたことがあるのでわかるが、
ほとんどのデザイナーがこのアーティスト型に憧れ目指している。
世間でもデザイナーはアーティスト畑の人
と思っている人が多いのではないだろうか?
しかし、私が実際に見た優秀なデザイナーのほとんどは、このアーティスト型ではない。
優秀なデザイナーはどんなタイプかというと、
ヒアリングから顧客の求めていることを
つかむのがとても上手いのである。
顧客のやって欲しいことをヒアリングして、
その場で「こんな感じですよね?」と
ラフスケッチを使って提案する。
顧客からは「それ良いですね!」という反応。
その場である程度方向性も決めているので後
からのやり直しもほとんどない。
これが本当のプロのデザイナーなのかなと思う。
別にアーティスト級のオンリーワンのデザイン力
を持っていなくても良いのである。
今回、クライアントが欲しかったことは「自社のコンセプトの表現」である。
これはクライアントもはっきりとは自覚していないことが多い。
だから意図してヒアリングしないと出てこないのだ。
今回のデザインは、
このクライアント会社のコンセプトが入っていない。
というか、そもそもデザイナーは
クライアント会社のコンセプトなんて考えていないからそれがないのは当たり前。
考えているのは、
いかにイケてるデザインを作ってクライアントに評価されるか?
ということだけ。
これが「なんか違うな~?何が違うんだろうか?」と感じた理由、
今回のデザインがダメな理由なのである。
今回。デザイナーに必要だったことは、
顧客の欲しいこと=「自社のコンセプトの表現」を
ヒアリングして提供することだ。
それができるのがプロのデザイナーだと私は思う。
これは他人ごとではなくて、
私もプロであることを自覚して日々精進していきたい。